以前ミステリーチャンネルで放送されて録画していたアガサ・クリスティ原作の「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」(2022年版)をようやく見た。

フランチェスカ・アニスとジェームス・ワーウィックが演じている1980年版の「なぜ、エヴァンズに頼まなかったか」が大好きなので、どうしてもそれと比較してしまうが、記憶が新しいうちに感想を書いておきたい。
リメイクする場合、過去の路線を踏襲したただの焼き直しではあまり意味がないので、作る側はあれこれ工夫を凝らしている。
(ネタバレもあるので、小説を未読、ドラマを未見の方はご注意ください。)

●まず、コミカルな1980年版に比べると、全体の雰囲気がぐっとシリアスで明るくはない。
ボビーも真面目、牧師のお父さんも真面目、全体的に登場人物があまり笑わない感じ。
ヒロインのフランキーにゆったりとした余裕が感じられず、彼女が貴族のお嬢様??というのが正直なところ。ピリピリと尖がった感じがして、彼女に感情移入しづらかった。活動的なキャラクターを反映してか、彼女のファッションはマニッシュなものが多く、それはとても素敵だった。

●おそらくドローンを使った撮影だろうが、上空から起伏のある地形が映し出され、物語の始まる場所の様子がよく分かり、昔だったらわざわざヘリを飛ばさないと撮れない映像だろうな・・・と思いながら見ていた。

●ボビーの夢の中で、亡くなった男が持っていた写真の女性が動くシーンがあったが、こういった立体的な映像表現が使われているのも面白かった。1980年代では撮れない映像だ。

●冒頭の演出はショッキング。室内から外に出ていく女の後ろ姿が映り、庭仕事をしている年配の男性を呼ぶ。室内の窓ガラスでは蜂がブンブンうなっている。女はテラスのテーブルに置かれていた雑誌を手に取り、家に入るとすかさず蜂を叩き潰す。潰れた蜂の脚が微妙に痙攣していたような・・・・終盤に再びこの映像が使われ、冒頭に示された伏線が回収される上手い演出だった。

●原作には登場しない「山高帽の謎の男」が出てくるが、このキャラクター必要? この人物のせいで、より話が暗い感じになっちゃって・・・トーマス医師まで殺してしまう意味があったのだろうか?吊られたシルエットはグロテスクで美しくないし。
ボビーの共同経営ノッカー・ビートン(原作ではバジャー・ビートン)と山高帽の男のバトルシーンまであって、ちょっとびっくり。1980年版の頼りないバジャー・ビートンと全く違うキャラクター設定だった。黒人の俳優が演じているのが意外だった。

●お屋敷の台所でボビーがトミイに勉強(フランス語?)を教えてあげたり、トミイの父親が亡くなった夜にフランキーがベッドで彼に本を読んであげる場面は温かみが感じられてホッとした。

●ロジャーとヘンリーがとても兄弟には見えなかった。原作では、ロジャーは敵か味方かよく分からないが、とても魅力的があってフランキーも魅かれてしまうという設定だったが、ドラマのロジャーはちょっと地味で小粒な感じがした。

●フランキーの両親がジム・ブロードベントとエマ・トンプソンという豪華キャストで一場面だけの登場だった。最後の結婚式の場面にも映っていたら良かったのに。

見てからちょっと時間が経ってしまったので、記憶違いがあるかも・・・・