「謎を知ってるチョコレート」

原題は「The House of Lurking Death/死のひそむ家」。短編集「おしどり探偵」では後半に出てくる事件だが、TVシリーズでは2話目になっている。

【登場人物】
ロイス・ハーグリーヴズ・・・事件の依頼人
レディ・ラドクリフ・・・ロイスの叔母(故人)
デニス・ラドクリフ・・・レディ・ラドクリフの夫の甥
レイチェル・ローガン・・・レディ・ラドクリフの元コンパニオン
メアリ・チルコット・・・ロイスの友人
ハナ・マクファーソン・・・レディ・ラドクリフの元メイド
ハロウェイ夫人・・・屋敷の料理人
ローズ・・・その娘、メイド
エスター・クアント・・・客間係のメイド
バートン・・・医師


【ストーリー】
田舎の屋敷サーンリー・グレインジで親類縁者や友人と暮らす若く美しいロイスが相談に訪れる。彼女は叔母の莫大な遺産を相続していた。彼女を含めて届いたチョコレートを食べた者が倒れるという事件があり、近辺の大きな屋敷でも同様の事件が起こっていた。チョコレートには砒素が入っていたのだ。ロイスは警察には届けず、探偵局に助けを求める。チョコレートが屋敷内から発送されたものだったからだ。
トミーとタペンスは翌日に屋敷を訪問する約束をしてロイスは帰るが、翌朝の朝刊にサーンリー・グレインジで毒殺事件があったと報じられていた・・・・・

【三匹の魚】

問題のチョコレートが屋敷内から発送されたものだと分かったのは、ロイス自身が無意識に落書きした3匹の魚の絵が描かれた包装紙が使われていたからだ。
3匹の魚が互いに絡みあうこの印象的な絵は、毎回番組の冒頭に登場する。
また「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか」(1980年)のタイトルにも、既にこの絵が使われている。

【美しき依頼人】

依頼人のロイスは可憐で美しい女性。トミーは洗練された応対をしなければと、目尻を下げて急にフランス語を混ぜて話し出し、アルバートは彼女を部屋に通した後もなかなか立ち去らず、トミーに退出を促される。
探偵局でのやり取りはコミカルだが、この後第二の事件が起こり、後半は事件現場の陰気なサーンリー・グレインジへと舞台を移す。

【植物性の毒】

毒入りチョコレートに続く事件では、無花果ジャムのサンドイッチを食べた者が被害にあった。ジャムにはヒマシ油を採るヒマ(トウゴマ/学名Ricinus communis)の種子から抽出される「リシン(Ricin)」という猛毒が入っていた。英語では「ライシン」と発音されており、サプリメントの「リシン(Lysine)」とは別物。
リシンの原料となるヒマは屋敷内の温室に生えていた。
ミス・マープルの「ポケットにライ麦を」でも、事件の起きた屋敷の庭にある植物から抽出された毒が殺人に使用された。

【原作との違い】

・メイドのエスターは、原作ではロイスの言葉を通じて「物静かなとてもいい子のようです」と語られるだけだが、ドラマ版では仕事そっちのけで手鏡をのぞいてメイクのチェックに余念が無く、よくしゃべり信心深いハナを馬鹿にし、デニスとも親しい様子。
デニスについても原作では詳しく語られてなかったが、競馬好き、女好きなキャラクターに描かれていた。

・サーンリー・グレインジの庭に現れる黒い犬は原作には出てこない。イギリスでは古くからの伝承で、ブラックドッグ (black dog) は黒い犬の姿をした不吉な妖精のことだそうだ。ヘルハウンド (hellhound)、黒妖犬とも呼ばれ、死のイメージと結びつけられる不吉の象徴で、原題の「死をはらむ家」にふさわしい。


【ドラマの感想】

なんといっても依頼人のロイスが可憐で美しく、前半の探偵局でのやりとりは男どもの反応が笑えるコミカルなものだった。特に、トミーがアルバートの名前をわざわざフランス風に「アルベール」と呼ぶところなど笑えた。
第二の事件が起こった後半は一転して暗いお屋敷での展開となり、前半と後半の雰囲気が全く異なる。
原題は「死のひそむ家/The House of Lurking Death」。ドラマの邦題「謎を知ってるチョコレート」は、エンディングの雰囲気には合っていない。

医師のバートン先生や狂信的なメイドのハナを演じている俳優達が個性的な容貌なので、どの人物も怪しく見えてしまうが、ミスリードの為の配役だろうか。
屋敷の若い女性たちはメイドも含めて皆デニスに惹かれていたが、それならもう少し男前の俳優さんに演じてもらいたかったところ。

 

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