原題は「The Clergymans Daughter/牧師の娘」。原作では、前半の「牧師の娘」と後半の「The Red House/赤い館」に分かれている。今回の依頼人モニカ、そしてタペンス自身が「牧師の娘」である。タペンスはいつも聖書を持ち歩いており、それが赤い館での暗号解読に役立つ。
モニカ・ディーン・・・赤い館の女主人
ミセス・クロケット・・・赤い館の使用人
フランク・マルベリー・・・通いの庭師
パーシヴァル・スマート・・・館の購入希望者
ドクター・オニール・・・館の購入希望者
ノーマン・パートリッジ・・・モニカの求婚者
ジェラルド・・・モニカの恋人
【ストーリー】
牧師の娘モニカは亡くなった裕福な叔母の古い屋敷「赤い館」を相続したが、何故かそれ以外の財産は殆んど残っていなかった。収入を得るために宿泊業を始めたものの、超常現象が頻発し客が寄り付かなくなった。心霊現象を研究している博士と名乗る男がやって来て赤い館の購入を申し出るが、モニカはその男に見覚えがあった。悩んだモニカは国際探偵事務所に相談に訪れる。
タペンスは霊感の強い貴族の婦人、トミーはその夫に扮して「赤い館」に宿泊し、真相を探る。そして消えた叔母の財産はどこに・・・
【アルバートは映画に夢中】
第1話の「桃色真珠紛失事件」でもアルバートの映画フリークぶりが描かれていたが、今回もサイレント映画「血と砂/Blood and Sand」(1922)に影響されてタンゴを踊るルドルフ・ヴァレンティノを気取っていた。他にもアルバートの台詞の中に、ダグラス・フェアバンクス「黒い海賊/The Black Pirate」(1926)、サイレント映画の怪奇スターのロン・チェイニー「黒い鳥/The Blackbird」(1926)の名前が出てくる。
この回のアルバートは、トミーとタペンスが「赤い館」を訪れる際のお抱え運転手に扮したり、深夜の見張り役を命ぜられたりと大忙し。終盤の機転を利かせた活躍ぶりには、アルバートの映画好きが大いに役立っている。
【ポルターガイスト現象】
ポルターガイスト(ドイツ語で「騒がしい霊」)とは、人が触れたり操作していないにもかかわらず、物が勝手に動いたり、激しい物音がしたり、灯りが点滅したりといった超常現象のことをいう。
世界各地で様々な伝承や事象の報告があるが、その中にはニセモノもかなり混じっているようである。
ドラマの中では、上階の部屋のベッドの支柱が折れる、洋服が切り刻まれる、陶器が割れる等の現象が起こっていた。宿泊客たちがおびえて帰ってしまい、モニカは途方に暮れる。
タペンスは霊媒体質の貴族の夫人に扮して赤い館を訪れ、霊と交信する名(迷?)演技を披露する。
【ガス灯と電気】
イギリスでは都市ガスのシステムが高度に発達しており、電灯に比べてガス灯のコストも安かった。それに加えて、法律上の問題や新しいものを敬遠する国民性など様々な要因が重なって、電化への対応がなかなか進まなかったという。
「赤い館」では、未だにガス灯を使用しており、「灯りが明るくなったり暗くなったりする」と、泊り客から苦情が出ていた。
【宝探しの暗号解読】
モニカの叔母が残したメモの中に、謎めいた詩が書かれていた。これが消えた宝(叔母の財産)の在りかを示すヒントのひとつ。
日本語の吹き替えでは、暗号解読の部分が理解しづらいのでおさらいを。
【原文】
My first you put on glowing coal
And into it you put my whole;
My second really is the first;
My third mislikes the winter blast
【訳文】
私の一番目を燃える石炭の上に置く
そしてその中に私が丸ごと入る
私の二番目はほんとうは一番め
私の三番目は冬の木枯らしが嫌い
さて、いったい「私」は誰でしょう?
【解説と答え】
私の一番目を燃える石炭の上に置く→①料理用の深鍋「pot」
そしてその中に私が丸ごと入る→①+②+③
私の二番目はほんとうは一番め→②アルファベットの一番目「a」
私の三番目は冬の木枯らしが嫌い→③(冷たい)つま先「toes」
答えは「pot+a+toes=potatoes」
その他のメモや新聞記事などにもヒントが隠されており、二人は宝の在りかを突き止める。
【原作との違い】
ドラマではタペンスが貴族の婦人に扮して(トミーは平民の夫という設定)、夫婦で赤い館に宿泊するが、原作では館には泊まらずに近くの宿に泊まり、その宿で隠された財産のありかを示す暗号を解く。ドラマでは宿泊した赤い館の部屋の換気口から暗号解読した会話を盗み聞きされ、敵に先回りされる。敵との直接対決やアルバートの活躍も原作には無い。
解読する暗号の詩は分かりやすくするために、日本語吹き替えの台詞が少し変更されていた。
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