さりげなくネタバレありの感想(未読の方はご注意ください)

2024年にHULUでドラマ化された『十角館の殺人』がずっと気になっており、やはりドラマを見る前に原作をもう一度読んでおこうと思い、久々に読み返してみた。
最初に読んだのは1990年代の後半、もう30年近く経っている。初めて手にした綾辻作品『霧越邸殺人事件』に魅せられ、その後、『十角館の殺人』を皮切りに、館シリーズを次々に読んでいった。

もちろんあの衝撃的なトリックと犯人はしっかり記憶に残っていた。
初めて読んだ時、あの衝撃の一文と言われる例の箇所で、「へ?なんであんたがここにいるの?!」と頭の中は大混乱!
『十角館の殺人』は「トライアスロン並み体力必要犯行計画」「犯人むちゃくちゃ忙しい」「その割に動機が・・・」という感想がしっかりとインプットされた。
その後の館シリーズは、思い返しても犯人もストーリーもすっかり忘れている。(再読しなくちゃ)『十角館の殺人』は、確かに一度読んだら忘れ難い作品なのだ。

今回、数十年ぶりに再読してみて、感想は初読の時と変わらずだったが、自分が年を取ったせいか、この力技でねじ伏せるというかアクロバティックなところに、書いた当時の作者の若さや勢いが感じられて、それが好ましく思えた。
また、犯人を知っている目線で読むと、いろいろと細かい気づきがあって面白かった。

ミス研の学生たちはよくタバコを吸う。
タバコに注目すると、エラリイはセーラム、ポオはラーク、ヴァンはセブンスターを吸っている。アガサもタバコを吸う場面はあったが、銘柄は記されていなかった。河南と守須が吸うのはセブンスター。銘柄が犯人の特定には直接結びつかないが、再読するとその意味が分かったのがちょっと嬉しい。守須の住むワンルーム・マンションの名前も然り。

ただね・・・どうしても動機が弱い。私は「Why Done It?」の納得感をとても重視する。トリックを成立させるための後付けの動機という感が否めない。
そんでもって甥が大量殺人犯と世間に知れたら、叔父さんにものすごく迷惑がかかるよね・・・、不動産の仕事、大丈夫かな・・・とか、絵空事のミステリーなのに変に現実的な心配したりして。
それでも最初に読んだ時よりも、この作品を好きになったのは間違いない。

そして、因縁の中村兄弟の名前は青司と紅次郎、「RED&BLUE」だった。