The Ugly Duckling
Frank Cadogan Cowper (1877-1958)
Cheltenham Art Gallery & Museums

1990年に英国のチェルトナムアートギャラリーでこの肖像画を見て以来、ずっと記憶に残っていた。
再びこの美術館を訪れない限り二度とこの絵を見ることはできないだろうと当時は思ったが、ネット上で見られる時代が来るとは想像もしなかった。

この肖像画とタイトルを見た瞬間、頭の中で勝手に物語を作ってしまった。
これを描いた画家は若い男で、ついこの間まで妹のようにしか見ていなかった幼馴染の少女が一夜で蕾がパッと開いたかのように美しくなっていたのに驚嘆して一目で恋に落ち、夢中で絵筆を走らせたのだと・・・・・・
絵のタイトルは日本語に訳すと「みにくいアヒルの子」。
(優れたアーティストなら1枚の絵画に触発され、ある人は小説を、ある人は一篇の詩を、ある人は美しい曲を作るだろう)

このモデルは古典的な美貌の持ち主ではないが、初々しさ、活き活きとした生命感、やや恥じらいつつも自分の魅力に気づき始めた自信に輝く表情でオーラを放つ。

調べてみるとSir Frank Cadogan Cooper/フランク・カドガン・クーパー(1877~1958年)はラファエロ前派の後期に属する画家で、物語や寓話を題材にした絵を多数描いている。
私が想像したストーリーとはまったく違っていて、これは1950年に描かれた晩年の作品だった。
画家の若い頃の作品よりも躍動感があって瑞々しいこの肖像画は、この印象的なタイトルと共にこれからも色褪せずに人々の記憶に残るだろう。

この絵は2005年に来館者人気No.1の作品に選ばれている。