【 ツィゴイネルワイゼン/ Zigeunerweisen 】
1980年 日本映画(ATG配給)
監督:鈴木清順/出演:原田芳雄、大谷直子、藤田敏八、大楠道代
贅沢な「幽霊屋敷」に迷い込んだような映画。
この映画では、映画監督の藤田敏八が俳優として出演。
舞台設定は昭和初期。
主人公の青地(藤田敏八)は真面目な男で、同僚の自由奔放な中砂(原田芳雄)に振り回される。
中砂は結局、旅に出て死んでしまうのだが、その死の場面が満開の桜の下だった。
青池が彼の訃報を電話で聞く場面でも、桜の花吹雪が散っていた。
散る桜は、日本人の死のイメージと結びついている。
夫に中砂の死を伝える妻(大楠道代)
中砂の死後も、青地は自分の周りで起こる不可思議な出来事や周囲の女達の奇妙な言動に悩まされる。
彼を悩ますのは中砂の妻、芸者の女、自分の妻、妻の妹、中砂の幼い娘、そして自分自身の妄想。
死んだはずの中砂がまるで生きているようで、女達も中砂に操られているかのようだ。
特に大楠道代が不気味だった。
この綺麗で妖しげな女たちに悩まされるのは、男にとっては幸せと言えるんじゃないだろうか。
私は当時、人の少ない映画館の最後列で見たのだが、背筋が寒くなり、思わず後ろを振り返りたくなったのを覚えている。
怖くて、美しくて、エロティックでへんてこな映画。
大正浪漫3部作として、この後、「陽炎座」、「夢二」が創られたが、この「ツィゴイネルワイゼン」が一番印象に残った。
鈴木清順、藤田敏八、原田芳雄・・・・みな鬼籍に入ってしまった。